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あうろーブログ

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【読書感想】西加奈子さん著「ふくわらい」(直木賞候補作)"見えてる世界が全て"を前向きにとらえることができるすごくおもしろい物語

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西加奈子さん著「ふくわらい」

第1回河合隼雄物語賞受賞作

第148回直木賞候補作

キノベス!2013:1位(紀伊國屋書店スタッフおすすめ)

 

すっごくおもしろかった!

 

内容紹介:アマゾンより引用

マルキ・ド・サドをもじって名づけられた、書籍編集者の鳴木戸定。

彼女は幼い頃、紀行作家の父に連れられていった旅先で、誰もが目を覆うような特異な体験をした。

その時から彼女は、世間と自分を隔てる壁を強く意識するようになる。

愛情も友情も知らず不器用に生きる彼女は、愛を語ってくる盲目の男性や、必死に自分を表現するロートル・レスラーとの触れ合いの中で、自分を包み込む愛すべき世界に気づいていく。

 

奇抜な設定をふんだんに使用したおもしろい物語。純文学っぽい匂いはしないタイプの作品。芥川賞じゃなくて直木賞候補作だもんね。

 

元々連載ものだってこともあり、次の展開は?とおもしろくて一気読みだった。ページ数そこそこあったけど短い会話が多いので、中編小説くらいなボリュームに感じた。

 

物語としては、少女(のような中身の女性)が社会にいい意味で慣れてくるということで、それがメインテーマだと思う。

ぼくはそれ自体よりも中に練りこんでくれてる「見えてる世界が全て、そしてはその世界は広がっていく」というテーマにとっても惹かれた。

 

そのことが描かれている一部をご紹介。

 

主人公の女性(名前:鳴木戸 定)を好きだ好きだと一方的に言ってくる盲目の男と主人公と女友達、この3人で会ってるときの会話の場面

「でも僕の中で、定さんはもう美人なんです。可視化出来る世界のことは僕に知らせないでいい。僕の『すべて』の定さんは、とても美しく、誰より優しいんだから。」

「それって、やっぱり、鳴木戸さんのこと、本当にちゃんと見てない。」

「僕は見えないんだもの。」

「そういうことなんじゃないんです。ちゃんと、鳴木戸さんの内面を見てないってことです。」

「内面って?」

「美人以外のこと。」

「優しい。」

「それだけですか。」

 「それが今知っている、定さんのすべてだから。それが、内面というのなら。」 

直後の、主人公と女友達との会話

「悔しいけど、私が今までつきあってきた男より、断然正直だと思いました。鳴木戸さんのこと、大切にするかわかんないけど、でも、正直。」

「そうですか。」

「たしかに、私が知っている鳴木戸さんと、彼が知っている鳴木戸さんの違いって、私にも、分からないんですよね。」

「そうですか。」

「彼は、少なくとも、分からないということを、分かってる気がする。」

 

「見えてる世界が全て」とか「脳が認知する世界が全て」とかいう話。自己啓発的な話だと、「見えてないことは切り捨てろ。自分が見てる世界を信じろ。」みたいになるし、科学とか哲学だと「目で見ている事実と脳で認知している事実に差があるかもしれない。何を真実とすべきか?」みたいになる。

 

どの視点でもぼくはこのテーマが好きなんだけど、この物語を読んでうれしかったのは、「見えている世界が『すべて』だけど、その世界は広がっていく」ということを感じさせてくれたこと。(引用部分より先に読み進めると感じられる)

たしかに生きていればどんどん見ることが増える。そしたらその分『すべて』が広がる。なんかぼんやりと前向きな感じになれた気がする。

 

 

もう1つ、おもしろかった部分。人間の心の葛藤。

二流プロレスラーでかつ二流のエッセイストが愚痴を言う場面。

「〈前略〉レスラーが眩しくて、おいらもそれをやってるのに遠くて、そうだよ才能がなくて、社会も怖いし、言葉も怖いし、おいらには何もない。心底狂うことも出来ない。中途半端なんだ、何もかもよう。」

〈中略〉

 「おいらは、体があればいい。なのに、おいらはこうやって、『言葉』にすがってる。結局、言葉によう。」

 

自分が中途半端だというのはぼくもいつも感じているので、ものすごく共感できる。一部引用だから伝わらないけど、実際は(小説を頭から読み進めていれば)すごく切なくて素敵な場面。

 

おもしろい物語の一部を引用してみると、伝わらないなあと思う。おもしろい物語ってすごいなあと思う。

 

最後に、内容どうこうじゃなくてぼくがこの作品で一番気に入った文章をご紹介。

だがその、ふわふわと実態のない会話は、定の腹を柔らかく動かし、そして結局は、じわりと温めるのだった。 

 

なにがどういいかはうまく言えないけど、イイ!

 

 

この作品はあとからじわじわおもしろさが来るというより、読んでる最中がおもしろくて仕方ないという感じ。

基本的にこの作品の世界では人間の負とか陰の面(いじわるとか)が描かれていない。だからグロテスクな描写があってもどこかさわやかな世界観で、読後感がとてもいい。

 

西加奈子さんの作品読むの5つめだけど、今のところ全部おもしろい。

完全にお気に入りの作家さんになった。

 

 

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とりあえず…

今日は生きるつもり。

 

 

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